ルームシェア~7人の王子様~



「南條君は…それでいいの…?」


「…えっ?…」


南條君は私の言葉に目を見開く。


「南條君は、コンクールに出なくていいの…?」


薄暗い部屋に私の声だけか響く。
南條君は何か言いたげに目を伏せる。


「俺は……」


「今まで頑張ってきたのも、必死に努力していたのも、私は全部見てきた。だから思うんだ。本当はコンクールを諦めきれないんじゃないかって…」


私は続ける。


「出ないって言うなら仕方がないけど、私は、南條君の演奏を1人でも多くの人に聴いて欲しいって思った。私は、南條君の演奏で救われたから」


悠希にさえ打ち明けたことのない苦しみ。


両親が死んで、表ではいつも通りの私でいて、心では泣いていた。


そんな私に、南條君は音楽で、姿勢で、私に勇気をくれた。