ルームシェア~7人の王子様~



ボソッと言ったその言葉は、
私に考える暇も与えずに儚く消えた。


「え……?」


ようやく絞り出すことができた声も、
言葉にはならなかった。


「ばあちゃんの容態が、危ないらしい…。これから九州に帰らねぇと…」


おばあちゃんの容態が急変……。

九州に……?

到底3日で帰ってこられる訳がない。

おばあさんの容態も心配だけれど、
コンクールに出られないなんて…。


私は今まで、一番近くで南條君の頑張る姿を見てきていた。

天才と呼ばれる南條君でも、
人の何倍も努力をしていた。

夢のために努力を惜しまない南條君は、とてもかっこよかった。


「悪い…お前には、すげぇ応援してもらってたのに…」


南條君は、一つ一つ絞り出すように言葉を紡いでいった。


「いや…私は……」


私は、状況を理解できずにただ目を泳がせていた。


一番悔しいのは南條君なのに…。

今まで頑張ってきたのは…南條君なのに…。


南條君は、急ぎ足で私の横を通り過ぎると、そのまま二階へと上がっていってしまった。


私はただ呆然とその場を動けずにいた。