「いで!?」
「バーカ。全部顔に出てんだよ」
私はおでこを押さえる。
南條君はそれだけ言い残して、
踵を返して行ってしまう。
「まって!」
私は真っ赤な顔で我に返って、
南條君を呼び止めた。
「ん…?」
「バカなのは、お互い様だから!」
今度は南條君が面食らったようにポカンとする。
「おめーに言われたくねぇよ」
また行ってしまいそうな彼に、
私はポケットに入れていたものを投げつけた。
「これ、受け取って。じゃあ、また明日」
私は返事を聞く前に部屋の扉を開ける。
「本当、調子狂う…」
ボソッと言ったのが分かったけれど、
私は振り返らずに部屋に入った。
南條君に投げつけたのは、すみれ荘のみんなに書いてもらったメッセージを詰めた、手作りのお守りだった。
「頑張って…」
私は聞かれないよう小さく呟いた。


