しばらくモンスターと格闘していると、高城君から奇声が上がった。
そして画面上部に"千尋が力尽きました"と表示される。
「先輩ひどいですよー!」
高城君が悠希に言う。
「あー、悪い。間違えた」
どうやら、悠希が間違えて高城君を攻撃してしまったらしい。
なんでこのゲーム、
仲間にまで攻撃できるんだろう…。
私は少し嫌な予感を抱えながら、
またプレイをスタートする。
と、その時。
嫌な予感が現実になる。
今度は高城君が、
悠希にあからさまに攻撃をした。
装備が強かったのか一撃では力尽きなかったものの、HPが減った。
「あっ、先輩すみませ〜ん」
「千尋ォォオオ」
悠希が現実の高城君に怒鳴る。
ゲームごときで大人げないなぁ、と思っていると、
ゲーム内の悠希が反撃に出た。
大樽爆弾という大きな爆弾を、
みんなのいるところに仕掛けたのだ。
これは、少しの衝撃を加えるだけでたちまち爆発するという優れものだった。
「ちょっ、先輩!何考えて!」
「あぁ!先輩!」
「えっ、なに!?」
私達が反応するより早く、
爆弾は一気に爆発した。
画面上に、"千尋が力尽きました" "零士が力尽きました" "すみれが力尽きました" "gameover" と出る。
ゲームオーバーらしい。
私は訳もわからず、画面から顔をあげた。
「あの、どういうこ────」
聞くよりも早く、悠希と高城君が睨み合っていた。
「先輩!大人げないですよ!」
「だから〜、間違えたんだって」
怒る高城君を、悠希が笑ってなだめている。
いったいなんなの…?
意味が分からず首を傾げていると、鈴屋君に声をかけられる。
「2人で、もう1プレイしますか?」
みんなが熱中しているというゲームの魅力が分からないままなのは、どうも悲しいので、私は迷わず頷いた。