「再来月、ピアノのコンクールがあるんだ。一応全国の本選だから、それに勝つとアジアコンクールに行ける」



私は渡された紙に視線を落としながら、
南條君の話を聞く。


「ピアノが好きなら…見に来いよ」


私は南條君を見上げた。


「私が行っても、いいの?」


「別に…来たくねぇなら、無理にとは言わねぇけど」


「行きたい!南條君のピアノ、一番近くで応援したい。もっと聴きたい…!」


そう言うと、南條君は顔を気持ち綻ばせた。


「優勝するとは、限らねぇけどな」


「絶対できるよ!すごく、感動したもん」


コンクールの紙を握る手に、
ギュッと力が入る。

やっぱり、南條君ってすごいんだ。
全国予選…。


全然想像もできないけれど、
きっと、すごいピアニスト達が、全国から集まるんだ。


その中に、南條君も。


「なにニヤニヤしてんだよ」


南條君の声にハッとする。
どうやら顔に出ていたらしい。


「ううん、なんでも。頑張ってね」


私は心からの応援を告げた。


「ん」


南條君は短く言うと、
広げた楽譜をまとめ始めた。