南條君は横に立って、鍵盤の音から教えてくれる。


「ここがド。それから順番に、レから1オクターブ先のドまで」


南條君は、丁寧に教えてくれた。
少しづつ弾けるようになるのが分かった。


「違う。ラはこっち」


南條君のすらりと長い手が私の手に伸びる。

優しく持ち上げられて、位置を移される。
その時、ふわりと南條君の香りが、
私を包んでいった。

私が1人ドキドキしていると、
それに気づいた南條君は、
悪戯っぽく笑う。


「なんだよ?」


端整な顔立ちが、流れた髪の隙間から露になる。

ち、近い!!


その後の私は、ドキドキを抑えることに精一杯で、気づけばキラキラ星を南條君と連弾していた。


「お前、結構やるじゃん」


弾き終わると、南條君は微笑して褒めてくれた。


「南條君には全然適わないよ」


私も笑い返す。


「ったりめぇだろ」


そう笑う南條君は、会った当初よりも、全然楽しそうにしていた。