演奏が終わると、南條君は、ふう、と小さく息をついた。
「すごい…!」
私は精一杯拍手をした。
少しだけ、南條君を見直した。
いつも、ピアノを弾いている時のような顔をしていればいいのに…。
「別にそんなにすごくねーよ」
南條君は、少し恥ずかしそうに頭をかいた。
「ううん、すごいよ…!私、音楽なんてできないから、すごくかっこいい」
その言葉に、南條君はハッとしたように立ち上がった。
「弾いてみるか?キラキラ星くらいなら弾けんだろ」
私はぶんぶん、と、首を横に振る。
「無理無理!私、ずっと音楽は2だし…」
それでもなお、南條君は引かなかった。
「ほら、教えてやるから」
私は南條君の押しに負けて、
しぶしぶピアノの椅子に座った。


