「わぁ……」
南條君の部屋は、
中央にグランドピアノが置かれていて、クラシックのCDが並べられた棚が、
所狭しとある。
ベッドやクローゼット、ソファなどは、申しわけない程度に隅に寄せられていて、本当に音楽中心の部屋だった。
けれど、未だに南條君がピアノを弾けるというギャップに、
ただただ驚きを隠せない。
「ここ座っていいよ」
南條君に促されて、私はソファに座る。
南條君はピアノの椅子に腰掛けると、
私に顔を向けた。
「なに聴きたい?」
私は緊張したまま口を開く。
「あんまり詳しくないから…おまかせで」
「そうか。じゃあ、子犬のワルツって知ってる?」
「知ってるよ!結構有名だよね?」
私は、以前友達のピアノの発表会で聴いたのを思い出した。
「あぁ、それでいいか?」
「うん!」
私の答えを聞くと、
南條君はピアノに向き直る。
そして、音を奏で始めた。
やっぱり、すごく綺麗。
南條君によって操られている旋律は、
余韻を残しながら、また次の旋律を奏でる。
こんなに素敵な音楽を創り出すことができるなんて…。
私は最後まで南條君の演奏に聴き入っていた。


