雨宮先輩が言っていたことは、本当だったんだ…。
南條君がピアノを弾けるって。
私はしばらくその旋律に耳を傾けていた。
本当にこんな綺麗な音楽を、
南條君が奏でているなんて信じられない。
その時、ピタリと音がやんだ。
どうしたんだろうと思っていると、
ガチャリと音を立てて目の前の扉が開いた。
「なにしてんだよ」
部屋から南條君が顔をのぞかせた。
南條君は、いつもの如く不機嫌そうな顔をしている。
「あっ、いや……ピアノ、すごいね」
私がそう言うと、
南條君はギクリという顔をした。
「聞いてたのかよ」
「あ〜うん、ごめん…」
とりあえず謝る。
「別にいいけど……」
南條君はそれっきり口を閉じる。