「…他人と違うと、周りの目は厳しいからな……」
先輩はボソリとそう言って、
ワイシャツを羽織る。
触れてはいけないと思う。
だけど、止められなかった。
「素敵だと思います…私」
先輩は片目を大きく見開く。
「個性は人それぞれだし、誰になんと言われようと、それが自分自身だと思うんです」
私の言葉に、先輩はふっと息をはいた。
「お前はすごいな…。俺にはそんな勇気はない…。母親がフランス人で、小さい頃は、よくイジメられたりもした。素敵だなんて、言われたことないな…」
先輩は遠い昔を思い出すように言う。
「ここの寮のみんななら、絶対、素敵だと思ってくれるはずです」
この寮では、自分を隠すことのない、ありのままの一ノ瀬先輩でいてほしかった。
心を許せる、そんな関係でありたいと思った。


