「誠也ー、いるー?」
最後の住人の部屋。
トントン、とノックすると、直ぐに部屋の主の返事が返ってきた。
「おーう、あいとるー。入ってぇ」
この家のセキュリティは大丈夫なんだろうか。
でも、これも当たり前すぎる。
すみれ荘の日常だ。
ガチャっと開けると、
私は靴を脱いで家に上がる。
彼はいつものように、
奥のデスクでPCに向かっていた。
「誠也、凛空先輩から肉じゃがの差し入れだよ」
私の声に、誠也はつけていたヘッドフォンをはずすと、こちらを向いた。
「おおお!サンキュー!!ここんとこ、まともなモン食べてへんねん」
ヘッドフォンを机に置くと、
誠也は餌付け前の子犬のように、
ちょこちょことこちらに寄ってきた。


