「あれっ?琉生先輩、今日は早いんですね?」
千尋が話を逸らすように琉生君に話を投げかける。
「ん?あぁ。撮影とレコーディング」
そう言いながら、琉生君はゴミをポイッと投げる。
琉生君は高校卒業後、見事にプロのピアニストになった。
ピアノの腕もさることながら、
人目を引くルックスが人気で、
雑誌やテレビで大きく取り上げられているのをよく目にする。
ほんと、すごいなぁ。
「ふーん、じゃあ帰りにアイスお願いしますねっ」
「うるせぇ、ニート」
琉生君は意地悪な笑みでそう言いうと、
小走りで去っていった。
「に、ニートじゃないんですけど!?」
千尋はぷぅと頬を膨らませる。
「2年前までニートだったくせに」
私は、ゴミのお返しとばかりに
千尋に言う。
千尋は高校卒業後、3年浪人して大学に入った。
本人が言うには、
「陸上で活躍してたんですから、浪人は関係ないっすよ」
らしい。
まぁ、陸上で活躍していたのは事実だけどさ。
なんでも、なにかの記録を更新したらしく、たくさんのニュースに出ていたのを覚えている。


