ルームシェア~7人の王子様~



「それじゃあ行くか」


「そうだね。また」


今度こそ、2人は私たちから背を向けた。

だんだんと、
振っていた手が見えなくなり、
大きかった背中さえ見えなくなった。


「じゃあ、俺らも朝飯の片付けするか」


琉生君や零士君、架神君が名残惜しそうにすみれ荘へ戻っていく。

それでも私は、
ずっと2人の見えなくなった道の向こうを見つめていた。

私は、こらえきれずに、
涙をこぼした。

泣かないって決めたのに、
涙が止まらなくて。

別れなんかじゃないのに、
苦しくて、つらくて。

私を喪失感が襲った。


「すみれ先輩」


高城君が、私の頭にポンと大きな手を置く。


私は涙を拭いながら、
高城君を見上げた。


「泣くのはすみれ先輩が卒業する時ですよ。俺たちは、これからもすみれ荘の軌跡を、築き続けるんですから」


クシャクシャと撫でられた手が、
暖かくて、
私は更に小さな子供のようにわんわんと泣いた。


そうだよね、これからも、
続いていくんだ。

私たちのすみれ荘は、
続いていくんだ。


きっと、

そう、

いつまでも ──────。