「それじゃあ行くか」
「そうだね。また」
今度こそ、2人は私たちから背を向けた。
だんだんと、
振っていた手が見えなくなり、
大きかった背中さえ見えなくなった。
「じゃあ、俺らも朝飯の片付けするか」
琉生君や零士君、架神君が名残惜しそうにすみれ荘へ戻っていく。
それでも私は、
ずっと2人の見えなくなった道の向こうを見つめていた。
私は、こらえきれずに、
涙をこぼした。
泣かないって決めたのに、
涙が止まらなくて。
別れなんかじゃないのに、
苦しくて、つらくて。
私を喪失感が襲った。
「すみれ先輩」
高城君が、私の頭にポンと大きな手を置く。
私は涙を拭いながら、
高城君を見上げた。
「泣くのはすみれ先輩が卒業する時ですよ。俺たちは、これからもすみれ荘の軌跡を、築き続けるんですから」
クシャクシャと撫でられた手が、
暖かくて、
私は更に小さな子供のようにわんわんと泣いた。
そうだよね、これからも、
続いていくんだ。
私たちのすみれ荘は、
続いていくんだ。
きっと、
そう、
いつまでも ──────。


