「……そろそろ、バスの時間だ。俺、行くね」
一ノ瀬先輩が腕時計に視線を落としながら言う。
「ちゃんと、飯食って下さいよ」
琉生君が、どこか寂しそうにそう言う。
「うん。食べる」
「絶対、また来てくださいね。メールして下さいね!」
高城君も、無邪気な笑顔を浮かべながら手を振った。
「うん、絶対。それじゃあ、また」
一ノ瀬先輩は、控えめに手を振ると、
踵を返した。
ずっとそばにいてくれた一ノ瀬先輩。
最初は、無愛想で絡みづらいって思ってたけど、ホントはすっごい優しくて…。
遊園地では、お兄ちゃんをしっかりこなしてて、でも、どこか可愛くて。
先輩から、いろんな大切なことを教えてもらった。
傷つけてしまったこともあったけれど、
最後に味方になってくれたよのは、
先輩だった。
私は、小さくなっていく先輩の背中を、
見えなくなるまで見つめた。


