「家族に…なりたいんだ…」
悠希の声で、私はハッとする。
「えっ?ごめんよく聞こえな…」
「すみれと、家族になりたいんだ。もう、寂しい思いさせたくないから」
まっすぐな悠希の視線。
私は、悠希の言葉を飲み込めずにいた。
「……えっ?」
「ずっと一緒にいて欲しいんだ。だから、これ…」
悠希は手に持っていた小さなケースを開ける。
その中には、ペアリングが入っていた。
「すみれが学校卒業したら、一緒に暮らそう」
「うそ……」
私の頬に涙が伝う。
なにこれ、不意打ちすぎるよ…。
ずっと、一緒にいれるってこと?
一人にならなくて、いいの?
私は鼻を啜りながら首を縦に振る。
「ありがと、悠希っ………」
私はまた悠希に抱きついた。
ずっと、自分だけが不幸だと思ってた。
一瞬で大切なものが全て消えて、
なにもかも失って。
でも、違った。
すみれ荘には、たくさん問題を抱えた子たちがいて、傷つきながら、ここまでやってきた。
私は、不幸なんかじゃなかった。
こうして、大切な人と、大事な仲間に出会えて。
幸せを叶えてくれる神様って、
本当はいるのかもしれない。


