「悠希ー?いるー?」
その時、
俺を呼ぶ声と一緒に、部屋の扉がノックされた。
その声は考えるまもなく、すみれだということが分かる。
「いるよー」
返事を返すと、ガチャリと扉が開いて濡れた髪を垂らしたすみれが入ってきた。
こうして、部屋にすみれを招き入れるのも久しぶりのことだった。
「ごめんね、疲れてるのに」
「ううん。どうしたの?」
すみれは後ろ手に扉を閉めると、
俺が座っていたベッドの隣に、
ちょこんと腰掛けた。
「あのね、おめでとうって、一番に伝えたかったけど、伝えられなかったから…」
「ん?」
すみれは、明らかに挙動不審になっていて、
顔を真っ赤にしていた。
「あのね、だから…」
「どうし ────」
言葉を続けようとしないすみれをのぞき込もうとすると、突然、
すみれが前かがみになって、俺の唇に唇を重ねた。
驚いて、ただ目を見開いていると、
すみれは真っ赤な顔のまま見上げるように俺を見つめていた。
「プ、プレゼント…私じゃ…ダメ…?」
すみれの言葉に、
俺の頭の中でヤカンが沸騰するような音が響いた。


