小さい頃から、
たくさんの友人に囲まれて、
なに不自由なかった。
大抵のことは、人並みの努力で人の何倍も上手くいった。
中学も、なんとなく生徒会長やって、
なんとなくクラスを支える役に回っているつもりだった。
つもりだっただけだったんだ。
すみれ荘を作って、
男7人の生活を続けていくうちに、
気づいたんだ。
俺は、周りの奴らに支えられていたんだって。
いつも、
俺が、みんなをまとめないと、
俺が、みんなを安心させないと、
俺が、俺が、頑張らないと。
そう思ってきた。
でも、みんなは違った。
俺に、ありがとうって、
たくさんのことを返してくれた。
「ほんと…ありがとうって言いてぇのは、俺のほうだっての」
俺は自嘲するような笑みを浮かべた。
壁際にまとめた段ボール箱が目に入る。
本当に、
すみれ荘を出ていくんだな、俺。
ここでの生活が楽しすぎて、
全然実感ねぇや…。
「はぁ〜…」
俺は、何か残せたのだろうか。
ここに残る後輩たちに、
何か残せたのだろうか?


