「いや〜。すみれ荘も、もうできて2年が過ぎるのか〜」
悠希が話を逸らすように、
しみじみと言う。
「早いなぁ〜。今でも全然覚えてるよ、悠希がすみれ荘作った日のこと」
凛空先輩も嬉しそうに話を継いだ。
卒業式後って、必ず出逢いの話をするよなぁ〜。
私も、中学の卒業式の後はみんなとそんな話もしたっけ。
私は、すみれ荘の創立の話に聞き入る。
「悠希先輩が、寮の中庭からロケット花火を打ち上げたんでしたっけ?」
琉生君も呆れ顔で言う。
「そうそう!あれ面白かったなぁ〜。そのせいで本館の寮追い出されてさ、凛空と一緒にこの寮作ったんだよね」
「なにがねぇ〜なんだよ…」
「こんな人が生徒会長でよく大丈夫だったな……」
凛空先輩と琉生君から口々にディスられる悠希。
やっぱり、悠希は寮長でも元生徒会長でも、イジラレで親しみやすいんだよね。
改めて、悠希の周りからの信頼の厚さを実感する。
「でも…そのお陰で、みんなに出逢えた」
腕の中で眠るハスミンを撫でながら、
一ノ瀬先輩がうっすらと笑みを浮かべながら言う。
「そう考えると凄いですよね。すみれ荘がなかったら、きっと、俺たち話したこともなかったんだって思うと、奇跡ですよね」
鈴屋君も気持ち嬉しそうに話す。
両親が亡くなって、
いつまでたってもウジウジしている私を、
ここまで立ち直らせてくれたすみれ荘。
そして、すみれ荘のみんな。
本当に、奇跡だ。


