「なっ…なにっ…」
私は、滲み始めていた涙を拭う。
その時、
ふわりと悠希の匂いに包まれたと思ったら、
そのまま、唇に温かさが伝わる。
えっ……?
目を見開くと、
薄く笑みを浮かべた悠希の顔が離れていくところだった。
何が起こったのか考えるより早く、
周りからざわめきが広がる。
「可愛い」
ニコッと笑う悠希の胸を、
私は軽く殴る。
「ばっ、バカぁ!!」
こんなに大勢の人前でキスするなんて…!
私が顔を真っ赤にしていると、
周りから拍手がおこった。
なっ、なんで!!?
その日は、あまりにも頭が真っ白になってしまって、私はそれしか記憶していない。
ほんと、これからの学校生活…どうなるんだろ…。


