私はまた星空を見上げた。
「ありがとう、鈴屋君!私、自信が湧いてきた!」
私は、今度こそ心からの笑顔を鈴屋君に向ける。
すると、鈴屋君は私からサッと視線を逸らした。
「?」
私が首を傾げると、鈴屋君がボソりと言った。
「泣いたり、笑ったり…。先輩といると、なんか、すげぇ変な気持になるんです。俺」
「へっ、変な気持!?」
私は素っ頓狂な声を上げる。
「あっ、変な意味じゃなくて。こう…なんて言うか…理論じゃ説明がつかないような事ばっかで…。ほんと、変ですね、俺」
鈴屋君は、可愛い笑みを浮かべた。
普段がクールなだけあって、
すごく違和感かも…。
「…あ、でも、来年になったら今度は、俺と千尋君だけになっちゃうんっすね」
鈴屋君は思い出したように言う。
「あ…そうだね。私も、琉生君も架神君も卒業しちゃうんだよね」
そっかぁ…。
私もいつか、すみれ荘を出ていくときが来るんだ…。
「そうなったら、きっと俺も落ち込むと思うから、偉そうなこと言えないっすけどね」
鈴屋君は自嘲的な笑みを浮かべた。
でも、私たちがいなくなると悲しいなんて、
なんかちょっと嬉しいかな…。
「じゃあ私、留年しちゃおっかな?」
私が冗談めかして言うと、
鈴屋君もクスッと笑う。
「そしたら、もう先輩じゃなくて、すみれ、ですね」
「そうだね〜。じゃあ零士君だね」
「いいっすね。ってか、ちゃんと卒業して下さいよ」
星空の下、
私と零士君の話し声が、
澄み切った世界に響いていた。


