ルームシェア~7人の王子様~



「さむっ…」


そう呟いた鈴屋君の息が、
寒さを視覚的に伝えてくれる。


「ほんと。もう3月なのに…」


私は手に息を吹きかける。

すると、鈴屋君は自分の着ていたパーカーを脱ぐと、私の肩にかけてくれた。

私はビックリして鈴屋君を見上げると、
鈴屋君はなんでもないように空を見上げて言った。


「……悠希先輩たちがいなくなるのは…寂しいですか…?」


月の光で照らされた鈴屋君の顔は、
どこか儚げだった。


「うん…」


私は小さく続ける。


「私ね、親が2人とも死んじゃって、身寄りもいなくて…。側にいてくれたのが悠希だけだったんだ」


鈴屋君の目が、少し見開かれた。

そう言えば、両親の事を話したのって初めてだったっけ…。


「だから…また、一人になっちゃうんじゃないかって、不安なんだ。えへへ…」


私は無理な笑を作る。

なんだか、鈴屋君にはスラスラと言葉が出てくる。

鈴屋君は、フッと笑うと、手すりに添えられていた私の手に、自分の手を重ねた。

冷えきっていた手に、
鈴屋君の温もりが広がる。


「一人じゃ…ないですよ」


「えっ?」


私は、下げ始めていた視線を、
鈴屋君に戻す。


鈴屋君の真っ直ぐな視線が、
私を射抜く。