「じゃあこれで、凛空先輩は教師の夢に一歩近付いたってことなんですね」
みんなで囲む夕食。
高城君が嬉しそうに言う。
「まぁ、まだ大学合格しただけだけどね。本当、いろいろあっただけ、嬉しいかな」
凛空先輩も嬉しいようで、
照れくさそうにそう言った。
先輩は、ずっと小学校の先生になりたいって言っていたから、そりゃあ、嬉しいよね。
「悠希先輩は、大学で何するんですか?」
鈴屋君が悠希に尋ねる。
そう言えば、私も聞いたことなかった…。
「経営についてかな。いつか親父継がなきゃいけない訳だしさぁ」
悠希は大きくのびをしながら答える。
そっかぁ…。
悠希は、ここの学校の理事長になるのか…。
私は改めて感心する。
悠希は、生徒会長もやっていた訳だから、きっと生徒に寄り添った学校経営が出来るんじゃないかな〜。
「でも…俺も、やりたいこと見つけたってかさ〜」
悠希は語尾を濁す。
「えっ?やりたいこと…?」
私は、斜めに座る悠希を見据える。
「…また今度ね!」
悠希はそう言うと立ち上がった。
「よっしゃあ!明日は卒業式だし、みんな万全に準備しとけよ!」
そう言い残して、悠希はリビングを出ていく。
あれ…?なんか、隠された…?
私の心をモヤモヤが包む。
「あ!悠希先輩〜!俺と風呂行きましょうよー!」
悠希の後を追う高城君の背中をボンヤリと見つめながら、私は凛空先輩お手製の唐揚げを頬張った。


