携帯が着信を知らせたのは、
2時限目が始まる直前だった。
画面の中心に、
『受信 " 榊原 悠希 "』と出ている。
私は、有紀と愛香と顔を見合わせると、
震える指先で、急いでメッセージを開いた。
件名のないメッセージ。
本文には、
『合格!』
の文字。
その言葉と一緒に添付された、
前後で並ぶ悠希と凛空先輩の張り出された受験番号の画像。
私は大きく目を見開いて、
開いたままの口を手で覆った。
「よっ…よかったぁ……」
安堵の息を漏らした途端に、
涙で視界が歪んだ。
「泣くなって!…ゾッコンかっての!」
有紀にペシッと肩を叩かれる。
それでも、涙はポタポタと垂れてくる。
「嬉しい…嬉しいよぉ…」
でもね、
合格の文字が、
まるで別れを告げているように見えてしまうんだ。
高校を卒業するってことは、
すみれ荘を出ていくっていうこと。
悠希も、凛空先輩も、一ノ瀬先輩も、
すみれ荘からいなくなってしまう時が、
少しずつ、
少しずつ、
近づいているってことで……。
私の大好きなすみれ荘が、
だんだんと、変わりつつあるんだ…。


