ルームシェア~7人の王子様~



「一ノ瀬先輩。ちゃんと、悠希と話しました。本当に、ありがとうございます」


「俺は…何も」


先輩は嬉しそうでもなく、
少し悲しそうに笑った。


いつもはドアの隙間から会話をする程度だったから、一ノ瀬先輩の部屋に招かれたのはこれが初めてだった。

先輩の部屋は余計なものが何一つなくて、強いていうなら、大きなキャットタワーがあるくらいだった。


「先輩、本当はみんなのことすごく見てたんですね。なんか、ちょっと見直しました」


少し冗談めかして言うと、
先輩は少しムッと子供っぽい顔になって、私を見つめていた。


「へへ、冗談ですよ」


気にしてるのかなと思って、
そう言うけれど、先輩は少し悲しそうに目を細めてしまった。


「先輩……?」


そんなにまずかったかな…。


「あの…ごめんなさ……」


「恋愛って、すごい難しい…」


先輩はポツリとそう言った。


「えっ…?」


先輩は、なんでもないように潤んだ瞳で微笑した。


「男の部屋に長居するのは…よくないらしいよ…」


先輩はそう言って扉を開ける。


「あっ…ごめんなさい。ありがとうございました」


先輩、少し目が赤かったし、眠いのかな…。
私は申し訳なくなって、先輩にお礼を言うと部屋を出た。


閉ざされた扉の奥から、
ご主人様を心配する猫の鳴き声と、
鼻を啜る小さな音が聞こえた。