今日は、朝からすごく寒かった。
テスト1週間前からバイトが休みになるから、俺はすみれ荘に足を急がせていた。
坂を下っている時、
何度か聞き覚えのある声が聞こえた。
「この女のせいで、私は!!」
大倉さんの声だった。
すみれ荘以外の寮生は、
こことは真反対の通学路のはずだった。
訝しげに思って視線を向けると、
そこには大倉さんの他にも、悠希と佐伯がいた。
しばらく立ち止まっていると、
佐伯が背を向けて走り出してしまった。
いてもたってもいられなくなって、
俺は彼女の背中を追った。
自分でも、自分が理解できない。
叶わないのに、恋をする。
伝えられないくせに、抱きしめる。
君が笑えるなら、
君の笑顔が見れるのなら、
俺は、俺たちは、
傍にいたいって思ってしまうんだ。