"幸せにするから"
そんなこと、誰が言ったんだ。
"ずっと一緒にいて"
それは、心からの言葉なの?
佳奈って、あの子のこと呼んでいたんだね。
悠希のことを大好きだって思っていたのは、
私だけじゃなかったんだね。
それで、悠希は大倉さんのことを思っていたんだね。
全然、知らなかった。
私の独りよがりだったんだ。
坂をかけ降りる途中、
誰かにグッと腕を掴まれた。
「ッ…!」
悠希かと思って振り返ると、
強く、ギュッと抱きしめられた。
ふわりと、覚えのある香りがする。
この香りは、悠希じゃない。
「泣かないって…言ったじゃん…」
「一ノ瀬…先輩……」
神様は、残酷だ。
幸も不幸も、二分の一で連れてくる。
この世界は、残酷だ。
片想いなんて概念を創る。
本当にずるいのは、私の方だったんだ。