「佐伯先輩」
その声は、以前聞いた時よりも重く、暗く聞こえた。
振り返ると、案の定、声の主である大倉さんが不機嫌そうな顔を浮かべて私を睨んでいた。
「なにかな…?」
私は目一杯、嫌な感情を表に出さないように笑顔を作る。
「そうやって作り笑いして、悠希先輩も一ノ瀬先輩も陥れたんですか?」
「陥れたなんて…そんな……」
私は、彼女と距離をとりたくて、
数歩後ずさった。
「早く別れてくれませんか?悠希先輩、優しいから言い出せないんです。あなたから言ってください」
「ちょっと…まって…」
私は、これでいいの?
悠希と別れていいの?
多分、私、悠希のことが、まだ大好きなんだ…。
「悠希先輩とヤれたから、もういいや、とか思ってるんでしょ?そうやってすぐに一ノ瀬先輩に乗り換えるんですね。一ノ瀬先輩なら落としやすそうとか思ったんですか?ほんとサイテー」
大倉さんは、私との距離をジリジリと詰めると、私の髪をグイッと掴んでくる。


