「そうか…」
先輩は私の話を聞いた後、
そう呟いて、お茶を一口啜った。
職業柄か、先輩は話の聞き役が上手で、余計なことまで話してしまった感がある。
先輩が連れてきてくれたカフェが、
閑静で雰囲気がよかったっていうのもあるんだと思うけれど…。
「もう…どうしたらいいか、分からなくて…」
「でも、佐伯は泣いてた。それって、本当に悠希の事を好きじゃないと泣けないんじゃない?」
「えっ…?」
先輩の青い片眼が、真っ直ぐに私を捉えていた。
「泣くまで本気だった。そうでしょ?」
先輩は小さく首を傾げる。
そっか…
私、なんで泣いてたんだろう…?
でも、そんなの、きっと自分が一番分かっているはずなんだ。
悠希が好き。
それだけは、分かる。
「ありがとうございます!私、やっぱりちゃんと悠希と話そうと思います」
私がそう言うと、先輩は微笑して頷いた。
一ノ瀬先輩が相談に乗ってくれるなんて、すごく新鮮だった。
周りに無関心そうなのに、
もしかしたら、思ったよりも周りを気遣っているのかもしれない。
そう言えば、一ノ瀬先輩は卒業した後、どうするんだろう?
悠希と凛空先輩は、同じ大学の別々の学部を受験するって言っていたけど…。
一ノ瀬先輩の大学の話は聞いたことがない。
その時、
「ちょっといい…?」
先輩が身を乗り出して、すっと手が伸びてくる。
恐る恐る見上げると、端整な顔がすぐ頭上にあった。
先輩の手は、私の髪を少し撫でると、そのまま下がっていった。
「ちょっとハネてた」
そう言って、片眼を細めて微笑する先輩。
やっぱり、将来の話は、まだ聞きたくないかも。
私達は、それから少しの間雑談を交わして、2人ですみれ荘へと帰った。


