ルームシェア~7人の王子様~



「そうか…」


先輩は私の話を聞いた後、
そう呟いて、お茶を一口啜った。

職業柄か、先輩は話の聞き役が上手で、余計なことまで話してしまった感がある。

先輩が連れてきてくれたカフェが、
閑静で雰囲気がよかったっていうのもあるんだと思うけれど…。


「もう…どうしたらいいか、分からなくて…」


「でも、佐伯は泣いてた。それって、本当に悠希の事を好きじゃないと泣けないんじゃない?」


「えっ…?」


先輩の青い片眼が、真っ直ぐに私を捉えていた。


「泣くまで本気だった。そうでしょ?」


先輩は小さく首を傾げる。

そっか…
私、なんで泣いてたんだろう…?

でも、そんなの、きっと自分が一番分かっているはずなんだ。

悠希が好き。

それだけは、分かる。


「ありがとうございます!私、やっぱりちゃんと悠希と話そうと思います」


私がそう言うと、先輩は微笑して頷いた。


一ノ瀬先輩が相談に乗ってくれるなんて、すごく新鮮だった。

周りに無関心そうなのに、
もしかしたら、思ったよりも周りを気遣っているのかもしれない。


そう言えば、一ノ瀬先輩は卒業した後、どうするんだろう?

悠希と凛空先輩は、同じ大学の別々の学部を受験するって言っていたけど…。

一ノ瀬先輩の大学の話は聞いたことがない。


その時、


「ちょっといい…?」


先輩が身を乗り出して、すっと手が伸びてくる。

恐る恐る見上げると、端整な顔がすぐ頭上にあった。

先輩の手は、私の髪を少し撫でると、そのまま下がっていった。


「ちょっとハネてた」


そう言って、片眼を細めて微笑する先輩。

やっぱり、将来の話は、まだ聞きたくないかも。

私達は、それから少しの間雑談を交わして、2人ですみれ荘へと帰った。