悠希と共に先輩の後を追ってリビングに入ると、
いつもみんなでご飯を囲むテーブルに、
凛空先輩の御両親がいた。
「来てたんだ…」
お父さんは、凛空先輩を一瞥すると立ち上がった。
そして、凛空先輩に歩み寄る。
手をあげられる、
そう思ったのは一瞬だった。
お父さんはそのまま力強く、
凛空先輩を抱きしめた。
「とっ、父さん!?」
凛空先輩は見開いた目を泳がせている。
「凛空、ごめんな。ごめんな…」
「父さん…?」
先輩のシャツが、涙で濡れていく。
「父さんが高卒で、会社を立ちあげるのに苦労したから、凛空には苦労させたくないって必死だったんだ。でも、凛空には凛空の夢があるなんて当たり前のこと、父さん、忘れてて……ごめんな」
男の人の涙を初めて見た。
息子を抱きしめて泣くお父さんは、
すごくかっこよく見えた。
家族って、すごい。
純粋にそう思った。


