結局、何の音沙汰もないまま、
雨宮先輩が実家に帰る予定の日曜日が来てしまった。
「先輩、どうするんですか…?」
私は、名残惜しそうな顔で荷物をまとめる先輩に話しかける。
連絡がない間も、先輩は少しづつダンボールに衣服類を詰めていて、部屋はほとんど殺風景だった。
「うん…。とりあえず、もう一度親と話してみる。俺だって、みんなと卒業したいから」
「素直なんですね」
「いつもだよ」
珍しく意地悪そうな笑顔の雨宮先輩。
先輩が元気になってよかった…。
「やっぱ、緊張するな…。俺の親父怖かったでしょ?」
先輩が備え付けのソファに腰掛けると、
少し笑いながら言う。
「めっちゃ怖かったです…」
私は正直に言う。
「でも、凛海ちゃんが親じゃないって言ったとき…すごく、悲しそうでした…」
「あぁ…そうだよね…。凛海はいつも静かだから、あんなこと言うなんて珍しいんだよね」