案内されたリビングで、
私は借りてきた猫のように小さくなっていた。
雨宮先輩の目の前に座る、
強面な雨宮先輩のお父さんは、
微動だにせず雨宮先輩を見つめていた。
こんな強面な人から…
にこやかな雨宮先輩が…。
遺伝という概念は、雨宮家に存在するのだろうか。
「もう一回言ってもらおうか」
お父さんの低い声が響く。
「学校…続けたいんだ…」
先輩の声に、お父さんの眉が寄った。
「どうしてだ。なぜ通う必要がある?お前は父さんの会社を継ぐんだろう」
「俺、小学校の先生になりたいんだ。ずっと夢だったんだ。だから ─────」
「夢?そんなものを叶えてどうする」
バンッと机が叩かれる。
私はビクッとして机を凝視した。
「ちょっと、お父さん…」
雨宮家の母親が止めに入った。
お母さんの方は、暖かい雰囲気が漂っていて、いかにもお嬢様育ちのようだった。
雨宮先輩は、全部お母さんからの遺伝子を受け継いだんだろう。
勝手に納得する。


