「お兄ちゃん?」
雨宮先輩が、うおっ、と声をあげて振り返る。
振り返った先にいたのは、
大きな瞳に、腰までのツインテールと切りそろえられた前髪が特徴的な、中学生くらいの女の子だった。
「あ、凛海!」
雨宮先輩に、りか、と呼ばれた女の子は、嬉しそうに大きな目をさらに大きく輝かせた。
「帰ってくるの、今日だったの?」
おそらく雨宮先輩の妹であろう凛海ちゃんは、玄関の門を開けながら言う。
「今日は、親父たちに話があって…」
凛海ちゃんは、ふーん、と答えると私と悠希に視線を向ける。
「悠希さんとすみれさんも、どうぞ入ってください」
言われてびっくりする。
なんで私の名前……。
「あっ、お兄ちゃんから聞いてます。お兄ちゃん、学校の話聞いてもすみれ荘の話しかしないから…」
なるほど……。
本当に、雨宮先輩はすみれ荘が大好きなんだ…。
絶対に、絶対に、
御両親を説得しないと…!


