「じゃあ、また明日」
部屋から出ていく雨宮先輩を見送り自室に戻ると、今にも(人のベッドで勝手に)寝そうな悠希に声をかけた。
「悠希〜?自分の部屋で寝なって」
「すみれも隣おいでよ〜…」
悠希は少し右にずれると、
掛けた布団を持ち上げた。
「もう子供じゃないんだから…。ほら、立って…」
私は悠希の肩を持って起こそうとする。
でも、男子校生というのはとても重いもので、多少持ち上がっただけで起こすとまではいかなかった。
と、その時、
ポスっと悠希が腰に抱きついてきた。
「な、なに!?」
私は素っ頓狂な声を上げる。
「ありがとね、すみれ。凛空のこととか…いろいろ」
その言葉に、私はふっと息を吐いた。
本当は、先輩がいなくなるのが1番辛いのは悠希だったんだよね。
知ってるよ、そんなの。
ずっと、悠希の隣にいたんだもん。
「ん…。いちごパフェで許してあげる」
私は冗談半分で言う。
悠希は小刻みにこくこくと頷くと、
そのまま、また寝てしまった。
まったく…もう…。
そうは思ったけど、
私のその日の記憶は、そこまでしかない。


