ルームシェア~7人の王子様~



「お前たち、俺が誰か忘れたわけ?」


突然の声に、私は背後を振り返る。

そこには、壁にもたれた悠希がいた。



……そっか…!

理事長だ………!


「悠希……!」


私は雨宮先輩の手を引くと、
悠希に駆け寄った。


「まだ、間に合うぜ」


悠希は雨宮先輩に白い封筒を投げる。


受け取った封筒には、
手紙と同じ几帳面な字で、
退学届けの文字。


「なんで……」


雨宮先輩は目を丸くする。


「まだ、口頭だけで、書類は全部預かってる。だから、お前はまだ、書類上はうちの生徒だ」


悠希の言葉に、
拭ってもらった涙が、
嬉し涙として戻ってきた。



「凛空さ、俺と何年の付き合いだと思ってんの?お前がここに残りたいことなんて、全部知ってんだよ」


……だから悠希は、
退学届けが受理されたってことも嘘だと知ってたから、焦ったりしなかったんだ。

それ以上に、なにより、
雨宮先輩との、信頼関係があったから。