すると、目の前の路地から黒猫が飛び出してきた。

よく見ると、オッドアイ。


「一ノ瀬先輩の猫…?」


「本当だ。なんでこんなところに…」


私は猫を追いかけようと走り出す。


「危ない、すみれさん!」


荷物がドサッと落ちる音と先輩の声、

背中に衝撃が走った。

びっくりして立ち止まる。
衝撃の正体は、先輩が私を抱き寄せたからだった。


その時、大きな音を立てて目の前をトラックが通り過ぎた。



せっ……先輩が抱き寄せてくれなかったら、
今頃……。

そう考えると背筋が凍った。


「よかった…」


先輩は大きな溜息をついて、私の肩に顔をうずめる。


「あ…ありがとう、ございます…」


びっくりして固まったまま、しばらくの間、私達はそうしていた。