ルームシェア~7人の王子様~




「雨宮先輩、入ります」


私は声だけかけてドアを開けた。


「あ、すみれさん。いらっしゃい。どうしたの?」


ダンボールしかない殺風景な部屋に置かれた机に向かい、筆を執っていた雨宮先輩が、笑顔を浮かべながらこちらにやってくる。


雨宮先輩の香りがふわりと近づく。


「あの…あの…」


" 行かないで下さい "


そう言いたいのに、
その言葉が出てこない。


" もう、無理だよ "


そんな先輩の声が聞こえてきそうで…。


「……」


先輩は、私の次の言葉を待っていた。


言葉が出なくて、私はただ口をパクパクさせていた。


「また、あのこと?」


先輩が言ってることは、すぐに分かった。


「もう、学校辞めたし、未練もないし、俺はいいと思ってるから」



先輩はそう言って笑う。