~ すみれside ~

文化祭から数日後、
私はまた軽音楽部の部室に訪れていた。


ライブは大成功だった。


期待の新世ボーカルなんて言われて、
学校新聞に取り上げられてしまい、
文化祭だけの助っ人でしたと今更言えるわけもなく、

結局、2年の秋という中途半端な時期に、私は軽音楽部の人気バンド
『full force』のボーカルとして入部した。


「ほんと、すみれ、一気に有名人だね」


ドラムスティックでペン回しをしながら、芹沢さん改め麗華ちゃんが学校新聞を見ながら言う。


「…あはは…そうみたいだね…」


すみれ荘に住んでいることや、
生徒会長の悠希と幼馴染みなことで、
既に浮いていたのに、また馴染みづらくなってしまった。

まぁ…歌うことは楽しいし、全然いいんだけどね…。


「でも、またすみれちゃんとバンドできて嬉しい!」


綾瀬君は変わらぬ笑顔を向けてくる。
本当、いつでもどこでも笑顔だな…。


「いろいろ悪いな…」


東條君はため息混じりで言う。
一方の東條君は、いつでもどこでも無気力感に溢れていた。


「すみれちゃんに歌ってもらえるなら、どんどん曲作るでぇ!」


架神君も、なんだかんだ楽しそうだった。

このメンバーに出会えて、よかった。
本当にそう思った。