「確かに、千尋はデリカシーに欠けるよね。口を開けば下ネタだし。あ、でも琉生普段はあんなだけど、本当はすっごい繊細なんだよ」
「繊細!?南條君がですか?」
私は素っ頓狂な声を上げる。
「あいつは、素直になれないだけなんだよ。ただ、ピアノにだけはすっげぇ素直だけどね」
先輩の言葉に驚く。
南條君がピアノ…?
「知らない?琉生、スカウトがくるくらいピアノ上手いの。俺たちには見せてくれないような優しい顔で、ピアノを弾くんだ」
「ピアノ…。あの南條君が…?」
想像できない。
似合わなすぎ!
南條君といえば…
『バカじゃねぇの?』
『ほんっとバカだな』
『バーカ』
って、いっつも私をバカにする。
ああ!思い出しただけでイライラする!
「最初は、そう思うかもね。でも、聞いたら絶対納得するはず」
先輩はどこか自信満々だ。
「ピアノ…南條君が…」
私は呪文のように唱えながら先輩の隣を歩く。
やっぱり、やっぱり、信じられない!