「やっ、やっぱり無理ぃい……」
出番5分前の舞台裏。
私の緊張は最高潮に達していた。
私たちの前の漫才同好会が、
想像以上に盛り上がっていて、
ハードルがとても高かった。
「さっき頑張るっていったのは誰?」
芹沢さんの言葉に、みんなが笑う。
「で……でも……」
「すみれちゃん、手ぇだして」
「?」
私は架神君に言われたとおりに手を差し出す。
すると、ふわりと架神君の手に優しく包まれた。
「ふぇっ?」
「ほら、緊張ほぐれたやろ?」
「あ…うんっ…」
違う意味で緊張してしまう私。
不意打ちはずるいな…。
「軽音楽部、準備お願いします」
雨宮先輩が私たちを呼びに来る。
「よっし!絶対に成功させるで!!」
私たちは円になって手を重ねる。
「せーの!」
「いくでぇ!」
「おー…」
「おっしゃあ!」
「おー」
「おっ、おお!」
本当に大丈夫……?
心配になる私だった。


