そして、いよいよ文化祭。
私はクラスでの仕事をこなしながら、
緊張を紛らわしていた。
後から聞いた話だけど、
架神君たちのバンドは、校内ではなかなかの人気らしく、去年の文化祭も軽音楽部の先輩たちを抜いて、1番の人気だったらしい。
そんなこと謙虚なバンドメンバーは一切言ってくれなかった。
本当に私でいいのだろうか?
やっぱり、その悩みは消えなかった。
「あぁ!すみれ、水こぼれてる!」
「えっ!?」
愛香に声をかけられて私は手元を見る。
お客さんに配膳する水がコップから溢れていた。
やば、私ぼーっとしてた…。
「大丈夫?すみれ、疲れてるんじゃない?」
有紀が溢れた水を拭き取ってくれる。
「うーん…ちょっと緊張しちゃって…」
私は下手な笑を浮かべる。
こんなに緊張するのって、いつぶりだろう……。


