ルームシェア~7人の王子様~




「ボーカルがいないと、バンドは成り立たない。お願い」


女の子の視線もキツく私に刺さる。

私は人にお願いを頼まれると断れないタイプの人間だ。


だからといって、バンドで歌えと言われて、そんなことができるほどハイスペックじゃない。


「じゃあ、メンバーの誰かが歌ったら…?」


「俺たちは楽器で精一杯で、歌まで回れない」


楽器のことは本当に無知なので、
そう言われてしまうと何も言えない。


「力になりたいけど…歌なんて歌えないよ…?」


「そこをなんとか」


一人の茶髪の男の子が、私の手を握ってくる。
大きな瞳から注がれる熱い視線。


うぅ……どうしろって言うの……!



「わ、分かった。とりあえず、やるだけやってみます……」


やると言わなければ帰さないと言わんばかりの視線に、私は渋々了承した。


やると言ったけど、
とりあえず、私の方でもボーカルを探してみる。

ボーカルの子が決まれば
それですべてが解決するわけだから。


私は飛び上がり喜ぶバンドマン達に別れを告げると、友達の元に戻った。