寮に着いた時には、
もう8時を過ぎていた。
今日、すみれに言おうと思う。
今まで隠していた想いを。
「あれ…誰もいないのかな…?」
廊下を歩きながらリビングに目を向けるが、
リビングの電気はついていなかった。
凛空の声を背に、ドアノブに手を掛ける。
その時、リビングの中から僅かに話し声が聞こえてきた。
"高城君、私……"
"先輩は何も……"
それは、すみれと千尋の声だった。
凛空と顔を見合わせると、
扉を少し開けた。
声がさらに聞こえやすくなる。
「私、すみれ荘が大好き。みんなが大好き」
「知ってますよ。先輩が、この寮のことがどれだけ好きかなんて」
「うん…。だから、今の関係を壊したくなくて、ずっと、考えてて……」
俺はすみれと千尋の話に聞き入る。
"すみれ荘が大好き"
その言葉で少し気持ちが晴れた気がした。


