「り、了解です!」
私は大人しく雨宮先輩の洗ってくれた食器を拭いた。
雨宮先輩って、すごい紳士だな…。
「あの、先輩はどうして悠希と仲がいいんですか?先輩、優しいから他にたくさん友達いそうですけど……」
疑問だったことを投げかけた。
雨宮先輩は選べるほど友達がいそうだけど……。
なんで悠希なんだろう?
「あはは!きっと、俺よりすみれさんの方が悠希のいいところ、たくさん知ってると思うけど」
雨宮先輩は、ははっと笑うと続けた。
「中学2年生の時だったかな?
俺、すごい人見知りだったから友達いなかったんだよね。
そんな時、クラスの女の子の財布が盗まれた事があって、みんなが俺を疑ったんだ。
多分、クラスで一番静かだったから、俺なら言い返せないって思われてたんだろうね」
雨宮先輩の過去を懐かしむような目に私は引き込まれる。
「でも、悠希だけは凛空はやってないって言ってくれて。
悠希はその時から周りの人からすっごい信頼されてたから、
だんだんクラスメイトも悠希が言うなら凛空じゃないんだ。ってなっていって…。
結局本当の犯人は見つかったんだけど…その時から俺は、悠希についていこうって、
こいつなら一緒にいれるって思ったんだ。
それから、高校も同じところにいって、今に至るって感じかな?
俺は、前に出てなにかするっていう事が苦手だから、裏方に回って、悠希を支えていたいんだ」
キュッと水道をしめる音に、
私の意識は引き戻される。
「先輩と悠希って、すごい信頼関係なんですね…」
私は感嘆の声をあげる。
お互いが支えあって、
本当に、親友、という名にふさわしい関係だと思った。
先輩は、私の言葉に照れくさそうに笑う。
「恥ずかしいから、悠希には内緒ね。飴あげる」
お皿を拭き終わった私の手に、先輩は飴をのせてくれた。
ハートの形をした可愛い飴。
「あ、ありがとうございます。でも、羨ましいです。おしどり夫婦みたいですね、先輩達」
私はくすっと笑う。
「え?悠希と夫婦?嫌だな、それは」
先輩もくすっと笑う。
それから毎日、私は先輩をお手伝いするようになった。
先輩は本当に優しくて、お手伝いの時間が私の楽しみになりつつあった。