ルームシェア~7人の王子様~


「お母さんか……」


高城君が親子の背中を見つめながら、
そう呟いた。


「えっ?」


私が聞き返すと、高城君は再び私の手を握った。

温もりが戻ってくる。


「いや…最近会ってないなって…」


悲しそうな笑顔。

そういえば、夏休みだけど帰省はしてないって言ってたし…。


「まだ一週間あるし、会いに行ったら?そこまで遠くないでしょ?」


私の言葉に高城君は握った手の力を強めた。

もしかして…まずかったかな…。


「ご、ごめん…」


そう言うと、高城君は首を横に振った。



「いや、いるにはいるんですけど…。うちも蓮先輩と一緒で片親で、仕事が忙しいみたいなんですよね〜…」


…そうだったんだ…。

すみれ荘には色んな事情がある人が住んでるし、いつも明るい高城君にも、やっぱりそういうのはあるんだ…。


「暗くならないで下さいよ!先輩は笑顔が可愛いんですから、笑っててください。」



高城君は、いつものように無邪気な笑顔に戻った。



私も、高城君の笑顔が大好きだよ。



それは、今は胸にしまっておこう…。