「せ、先輩…いま、なんて……?」
「えっ…?かっこいいなって…」
高城君は暗がりでも分かるくらいに、
顔を紅潮させている。
「も、もう一度、お願いします」
「かっ、かっこいい…?」
ますます赤くなる顔。
かっこいいって…そんなにあれかな…?
「……俺以外の人には言わないでくださいね…?」
男の子を抱きながら、そう言って笑う高城君は、やっぱり普段とは違ってかっこよかった。
「頑張るね」
私はそれだけ言って、大人しく高城君に抱かれている男の子に目を向ける。
男の子は安心しきったように、
眠そうな顔をしていた。
きっと、高城君の胸は安心するんだよね。
普段は部活で長距離に励んでいるし、
やっぱり、ただデリカシーがないだけじゃないのかもしれないな。
少し高城君を見直した。
その時、
「ママ!」
男の子がそう言って胸から顔を上げる。
男の子の視線の先に目を向けると、
こちらに涙目で走ってくる女性がいた。
「健太!」
高城君が健太と呼ばれた男の子を下ろすと、女性に向かって走る。
女性は男の子を抱きしめると、私達に何度もお礼を言う。
「健太もお礼を言いなさい」
「ありがとう、お姉ちゃんお兄ちゃん!」
そう言って手を振りながら去っていく親子は、とても幸せそうだった。


