「ママね…いなくなっちゃったの…」
男の子は涙を拭いながらゆっくりと言った。
「やっぱり…。どうします〜?先輩」
高城君は優しい手つきで男の子の頭をなでた。
「本部まで連れて行ってあげよう。もしかしたらお母さんいるかもしれないし」
私は男の子の手を取る。
けれど、男の子は歩きだそうとはしなかった。
「どうしたの?」
男の子を見下げると、小さく言う。
「ボクね…足痛くて…歩けないの…」
男の子の足を見ると、血が滲み、とても痛そうだった。
すると、高城君がすっと男の子を抱っこする。
「こうしたら大丈夫。ほら、行こう?」
「うん!」
元気に頷く男の子。
いつもデリカシーに欠けて、可愛い高城君が、すごくたくましく見えた。
私はクスッと笑う。
「なんですか?先輩」
「ちょっと、かっこいいなって」
私の言葉に、高城君は耳を劈くような声を上げる。


