「高城君〜…」
私は扉越しに高城君に声をかける。
「どうしました?」
「帯、結んでもらってもいいかな?」
私は浴衣の胸元を押さえながら扉を開けた。
「帯ですか?いいですよ…って、うわっ、めっちゃ綺麗ですね」
私の浴衣姿を見た高城君が、
そんな声をあげた。
高城君はデリカシーに欠けるところは多々あるけれど、
女の子の扱いが上手くて、年上の扱いも上手い。
「あ、ありがと…」
私は少し照れながら高城君に帯を渡す。
高城君は、照れなくてもいいんですよ。と言いながら私の後ろに回る。
高城君の手が、私の体を包むように前に回ってくる。
ドキドキしてはいけない場面なのは分かっているけれど、どうしても意識してしまう。
高城君、案外身長高いんだな…。
ドキドキしながらそんなことを思っていると、高城君の顔が横から私を覗いた。
「ドキドキしてますか?」
図星を当てられ、私は顔を逸らした。
やっぱり、デリカシーという概念は高城君の中には存在しないのだろうか。
「可愛いですよ、先輩」
帯を器用に結びながら高城君はまたそんなことを言ってくる。
高城君といると、いつも彼のペースに連れ込まれてしまう。
本当に、すごい女の子の扱いに慣れてるんだな……。


