「って、先輩、浴衣は?」


私服に着替えた私を見て、
高城君が驚いたような声をあげた。


「えっ?動きやすい方がいいかなって思ったんだけど…。浴衣の方がよかったかな?」


私の言葉に、高城君は大きく頷いた。


「当たり前ですよ!逆になんで浴衣じゃないんですか!?」


「そうかな…ごめん、着替えてくるね」


私は浴衣をとると、リビングと和室の扉を閉ざして着替えを始めた。


ただ、浴衣の帯は自分でしめることができないから、そこだけは高城に手伝ってもらわないと……。


浴衣に袖を通すと、
懐かしいお母さんの香りがした。

家族がいた頃に戻りたい。

そう思うことも沢山あるけど、
今はすみれ荘の皆がいるから、
気持ちが楽だった。