「えっ?そうっすけど…」


鈴屋君は訝しげな顔で首を傾げる。


「お願い!私に泳ぎ教えてもらえない…?」


私は顔の前で手を合わせる。


水泳部員直々に泳ぎを教えてもらえば、いくらカナヅチな私でも泳げるようになるだろう。


「先輩、泳げないんすか?」


「お、泳げない?ってゆーか…下手?ってゆーか…そう!下手なの!」


私は鈴屋君の問に、苦しい言い訳をする。


「…要するに泳げないんですね。別に、教えるぶんには構わないっすけど、専門はバックなんで、その他は上手くないです」


要約された…!

ば、バック…?
残念ながら、私は水泳に興味の欠片もないので専門用語は知らない。


「あぁ…背泳ぎです」


私の心の内を読むように鈴屋君が言った。

エスパー!?


「エスパーじゃないですから」


鈴屋君の発した言葉に驚愕を浮かべる。
私が思っていたことを…
どうして…!?


「先輩、全部顔に出てますよ」


私は顔を隠す。

ってことは、琉生君と手をつないだ時も、一ノ瀬先輩の胸に飛び込んでしまった時も…!?