私が言うと、先輩はびっくりした後、
また薄く笑った。


「辞めないさ…。頭まで下げられたのに辞められるような度胸はない…」


「ふふ、辞めるって聞いたときは驚きましたけど。またレンさんと一緒に仕事ができて嬉しいです」


一ノ瀬先輩の言葉に続けて、
みけさんが言った。


先輩に会いに来ている女の子もたくさんいるはずだから、
お店側の人が頭を下げるのも頷ける。


先輩は、すごい慕われているんだな…。


「レン君!写真撮らせて下さい!」


一ノ瀬先輩が後ろから大勢の女の子に声をかけられた。


「レンさん、呼んでますよ」


「あぁ。佐伯、ゆっくりしていけ」


去っていく先輩の後ろ姿を見つめながら、他の女の子のところに行ってしまうことに寂しさを覚えた。


なんだろう、この気持ち。


「大丈夫ですよ。レンさんの一番は、すみれさんですから」


みけさんがにっこり笑って言う。


「なにが…ですか?」


私が問うけれど、みけさんはお得意の笑顔で受け流す。


「あと30分もすれば、レンさんあがりますから」


みけさんはそんな言葉を残して去っていった。